伊坂幸太郎さんの【AX(アックス)】読みました。
※ネタバレも一部含まれます。

久しぶりの「殺し屋シリーズ」
グラスホッパーと
マリアビートルはどちらも好きだったので、
本書も期待が高かったが、
想像以上に楽しむことができました。


【あらすじ】Amazonの内容紹介より
【『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる、伊坂幸太郎史上最強のエンタメ小説<殺し屋シリーズ>!】

最強の殺し屋は――恐妻家。

物騒な奴がまた現れた!
新たなエンタメの可能性を切り開く、娯楽小説の最高峰!

「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。

こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。

書き下ろし2篇を加えた計5篇。シリーズ初の連作集!


【見どころ・ポイント】
①シリアスとコミカルの融合
「殺し屋」という非人道的な仕事をしている主人公の兜だが、
家では奥さんの機嫌にびくびくしている恐妻家という設定。
ところどころ笑わせてくれる。
根本的なところにある、家族への愛情や絆は物語が進むほどに鮮明になり、
感情移入せずにはいられない。


②衝撃のラスト
物語後半からは一気にストーリーが加速する。
格闘シーンは手に汗握る展開でページを繰る手が止まらなかった。
最後に残された「謎」にたどり着いたとき、
衝撃の結末に言葉が出なかった。


③過去の殺し屋シリーズとの繋がり
過去作を読んだ人が楽しめるように、
「蝉」「槿」「檸檬・蜜柑」などが直接的・間接的に登場。
殺し屋の世界がとても狭いことを感じさせるとともに、
これまで描かれていなかったエピソードからは、
懐かしさを覚える。


【こんな本】
「殺し屋シリーズ」3作目という側面を持ちますが、
本書から読んでも問題ないくらい独立した物語になっています。

仕事の腕は超一流!という殺し屋兜の
「恐妻家」というギャップが作品の魅力でもあります。

自分が体験していなくても、「あるある」とうなずいてしまうシーンも多数あり、
とてもリアルな感じがしました。

連載されていた前半と書き下ろしの後半では
物語の属性が大きく変わりますが、
時系列もあるので最初から順番に読み進めてほしいところ。

ラストシーンに対してのヒントは、
もちろんあった。
が、気付かなかった私にとっては衝撃の大きい結末だったと言えます。


【注目登場人物】
克巳:兜の一人息子
父親の正体には気付いていない。
いつも母の機嫌ばかり気にしている父を不憫に思っている。
本書では彼の高校時代からアラサーとなるまでの時間が流れる。
兜との掛け合いは読んでいてほっこりする。


【感想】
殺し屋にだって家族がいて、
普通の生活を送っている。という設定。
「殺し屋」という言葉から
「凶暴」「血が好き」「頭がおかしい」など連想できますが、
AX(アックス)の兜はあくまで仕事として、
殺し屋をしている。しかも「やめたい」と考えながらも、ずるずると取り組んでいるというもの。
家族に「真実」を伝えられない、「孤独」な部分がじーんと染みる。
誰にも相談できないっていうのは相当につらい。

そんな兜が松田だったり、奈野村という人物と意気投合し、
友情と呼べるものを築いていく際に得た気持ちは何よりも大切なものだったのではと感じます。
大人になってから友達を作るって、
現実世界でも「ハードル高い」と感じる人が多数ではないでしょうか。

自分の手を血に染めながらも
家族との暖かい毎日を大切にしたかった兜、
最強の殺し屋としての一面とその家族への深い愛のギャップに心打たれる作品でした。

このシリーズ4作目がいつか発売されるのを期待しています。